『ZEROTEN2026-Aichi-』作品解説

-作品について思うこと-

 愛知県のGALLERY龍屋さんにて開催されている『ZEROTEN 2026 -Aichi-』。こちらに出品している2点の作品解説もとい、最近の絵に関して思っていることをつらつらと記してみました。長文ですが作品を紐解く際の一助となればと思います。

『咲く場所で眠る』

・咲く場所で眠る

 風に靡く草原の中、咲き誇る小さな花々を照らし出す月の光… 今回の作品は風やその場の空気等の「目に見えないものを描く」という思いが如実に表れている一枚だな、と個人的には思っています。

 この感覚は、昔から絵を描く上で大事にしていることの一つでした。ただ最近、「目に見えないもの」を「目に見えるもの」として描く過程の中で、最初に抱いていた感覚は変化し、或いは失われているのではないかという疑問が生じていました。

 こんなことを書いてしまうと絵そのものの在り方を問う様に思われるかもしれませんがそういう身も蓋もない話ではなく、どうしたら元の感覚を失わず「見える」と「見えない」の間を結びつけることが出来るのか、という思いがあったのです。

 以前作品をご覧頂いた方に「よくは分からないけど、心が落ち着く」というご感想を頂いたことがあり、答えはこうした所にあるのではないかと思っています。

 何となく、とか漠然とした感覚…掴みどころの無いような、一見ぼんやりとした印象であったとしても、何か伝わるものがあるのではと。

 これは私の記憶を元に描いた風景ではあるけれど、夢で見た景色かもしれないし、本当に何処かにある場所かもしれない。夢と現実の間で微睡む様に、霞がかった原初の感覚を大切にした作品であったりするのです。

 また、一見すると月や花の描写は白一色に見えますが、これもインクによる白、色鉛筆による白、漂白剤による白など様々な白色によって描かれています。実際にご覧頂く際には、そうした微細な色合いの違いも含めてお楽しみ頂けるかもしれません。


『咲かない場所で息をする』

・咲かない場所で息をする

 小さな池を囲うように茂る草花。池には穏やかな光が反射し、その光を覗くように白い魚が姿を現しています。

 実はこの魚は最初描くつもりではなく、漂白剤を使って池を描いた時に偶然出来た白い跡を魚の姿として捉えたもの。つまるところ、描くという必然とそうではない偶然が絡み合って完成した一枚でもあります。

 なぜそうした作りにしているのかというと、絵という世界の中に自身の想像の外側にあるものを常に求めているからです。

 作品を描くのは私自身がそうしたいと思ったから、に他ならないのですがそれだけではない外からの影響があって、初めて絵というのは成立するものだと思っています。

 先の感覚の話にも繋がりますが、自身の理想とする風景が頭の中で既に出来上がっているなら、敢えてそれを形にする理由はない訳で…形にするのは、自身の外側に答えを求めているからでしょう。

 ともすれば自身の想像だけではなく、意識外の偶然を重ねることによってより外側に認識や絵の世界を押し拡げてゆく、ということが必要です。

 今回の場合で言えば「外側」は池の周りに拡がる草花の世界であり、タイトルの「咲かない場所」は自己認識のみでは花開かない池の部分であったりします。そこで息づく「魚」は自己と外側の世界を繋ぐ橋渡し的な存在と言えるかもしれません。

 …という長ったらしい語り口になってしまいましたが、観る方々においてはあまり深く考えず風景をお楽しみ頂ければと思います。ただそこに花が咲いていて綺麗、とか見上げた空の月が美しい、といった思いに小難しい理由は必要ないと思うので。

 

 絵を生み出す…というより生きる上で多少の苦悩や葛藤は必要かもしれませんが、作品を観る上ではあまり苦しくならないように、というのが自身のモットーでありますから…


 さて、龍屋さんでは毎年恒例のゼロテンも愛知での開催が今年で終了とのことで、5年程の間毎年のように展示に参加させて頂いた身としてもしみじみとした思いがあります。

 思えば、龍屋さんのみならずギャラリーという空間・場所は月の様な存在ではないか、と最近思っています。私にとって作品をご覧頂く全ての方々は太陽の様な存在(誇張ではなく)なのですが、その太陽の光を時に鏡として反射し、作家ないし作品の輪郭を際立たせるのが月でありギャラリーという存在であるのではないかと。今回の作品と少し似通った部分がありますね。

 多くの作品は、光の無い真っ暗闇の中ではその真価は明瞭にならない訳です。

 そんな作品一枚一枚に光を与えるゼロテン愛知…是非最後まで、会場やオンラインにてその勇姿をご覧いただければ幸いです。

出展者NO.48 / 岡本 博紀

 

展覧会詳細(オンライン販売&遠隔投票ページはこちら)↓

『ZEROTEN 2026 -Aichi-』

会期:2026年8月1日(土)~8月15日(土)会期中無休

AM11:00~PM6:00

開催場所:GALLERY龍屋

〒488-0007 愛知県尾張旭市柏井町公園通542